あの当時の王様は優しかった
国が威信をかけて守ろうとした事実を
公然に暴露してしまったにも関わらず
結果的に罪に問わず許してくれた
あの時どうして僕は
秘密を秘密として心の奥底に
留めておけなかったのだろう…
その事実をアウトプットする衝動を
抑えることができなかった
みんなが知らないことを知っている
という優越感だったのか、
はたまた恐怖からくるものなのか、
今となってはもう忘れてしまったけど
とにかく叫んだんだ…
王様の耳はロバの耳!
その事件から数年が経ち
僕はまたこの国に帰ってきた
イタリアに単身渡って
くるくるパーマの技術を学んだ
さぁ、故郷に錦を飾るんだ!
という強い想いと情熱を胸に
「barberロバ」をオープンした
店はすぐに大繁盛
初日から、君があの時の青年か!と
訪ねてくるお客さんも多かった
狙った通りの結果だったことから
どうやら僕には理容師としてだけではなく
経営者としてのセンスもあるようだ、
と我ながら感心した
瞬く間に6店舗展開のチェーン店へ
年間純利益が一億の大台に乗った頃、
久しぶりに王室から連絡がきた
「王様の理容を頼む」とー
店を大成功させた上に
今度は王様のお抱え理容師か…
こりゃあカリスマどころじゃないなw
なんて浮かれ気分でお城へと向かった
王様の部屋に通される
馬がいた
そして「ひさしぶりだな」と笑った
気を失って倒れそうになり、
そして踏みとどまる
ロバじゃなくて…馬…だったのか…
いや違う!
その前に何故完全なる馬にっ!?
歳こそ感じられるものの毛並み艶々、
耳がどうとかいう次元ではなく
それはもうパーフェクトな馬だった
馬は「くるくるパーマやってくれない?」
と単刀直入に切り出してきた
「あ、あとさ…」とおもむろに
「お前次晒したらマジ殺すからね」と
首をぶるんと震わせた
その夜、僕はもう死を覚悟で、
【悲報】ロバじゃなくて馬でした( ゚Д゚)ンマー
と画像付でツイートしてしまった
自己顕示欲なのであろうか、
はたまたただのかまってちゃんなのか、
そんなことのために僕は恐らく
店どころか命すら失うことになるだろう
Twitterとは本当に恐ろしい
だってほらもう10000RT
さっきから通知なりやまないもん
せめてサブ垢作って呟けばよかったな
と目を細めて満月を見上げる
さっきのツイートが最後の言葉かと
冷静になって考えてみると、
( ゚Д゚)ンマー
より他に何かもっといいのがあったのではと
悔やまれてならない
SILENT YARITORI
ちゅーへの手紙
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